カラダノート、筑波大学人文社会系 松島みどり准教授に調査協力
全国を対象にコロナ禍における妊産婦の心身の変化を調査(第2回)

ベビーカレンダー社と共同で全国3000名以上のママプレママを調査

「家族の健康を支え笑顔をふやす」をミッションとし、家族のライフステージごとの意思決定支援サービスを行なう株式会社カラダノート(東京都港区/代表:佐藤竜也/以下当社)は、筑波大学人文社会系 松島みどり准教授に協力し、新型コロナウイルス禍(以下、コロナ禍)における心身の健康の変化について調査しました。こちらは、株式会社ベビーカレンダー(東京都渋谷区/代表: 安田 啓司)と共同で調査いたしました。(有効回答数:3121名)

今回は、妊娠期~産後11か月までの母親(以下:妊婦及び産婦)の結果をまとめています。

■TOPIC1:エジンバラ産後うつ病質問票によるコロナ禍における妊産婦のメンタルヘルス
産後うつのスクリーニング用紙として用いられるエジンバラ産後うつ病質問票(EPDS)により妊産婦のメンタルヘルスの状況を調査しました。エジンバラ産後うつ病質問表は、今日では国内外で妊娠中から使用され、妊婦ならびに出産後1年未満の女性を対象に行われている。

EDPS概要
(公益社団法人日本産婦人科医会(2017)P41から抜粋、ただし(※)については,より近年の研究 Usuda et al.2017を参考とした)

・産後1年未満の女性に対しての日本におけるカットオフポイント(区分点)は9点が一般的である
・妊婦についてはカットオフポイントは13点を用いる(※)
・EDPS総合点9点以上が「うつ傾向が高い」とするものであるが、9点以上がうつ病で8点がうつ病ではない、と判断するものではない
・点数とうつ病の重症度に関連性はない
・うつ病以外の不安障害や精神遅滞などの他の精神疾患でEDPS総合点が高値になることもある
・2週間以上続いている場合はうつ病の可能性が高くなる

<全体サマリー>
※前回調査とは回答者不一致であり、また回答者数が異なるため、一概に言えない部分がある事が前提
・カットオフ値以上の人の割合は第1回調査よりも多少の減少が確認されたものの、コロナ禍以前に実施されたEPDSを用いた調査に比べて、スコアおよびカットオフ値以上の人の割合が高い (産褥婦 約24%、妊婦 15%)
・産褥婦について、通常時においては、初産婦は経産婦に比べて妊娠時および産褥期のうつ傾向が高くなるといわれている(Tokumitsu et al. 2020)ものの、第1回調査および今回の調査においては、初産婦と経産婦のうつ傾向の割合に大きな差は確認されなかった

(松島・堀口 2020(未発表))

<地域ごとの差異>
それぞれの地域でのカットオフ値以上の割合(比較のため、第1回調査と同様のグループ分けをしている)
・第1回の調査では、北海道や首都圏においてカットオフ値以上の割合が高い傾向にあったが、今回の調査では、一定の傾向は確認されなかった。

(カラダノートの考察)
・初産婦と経産婦のうつ傾向の割合に大きな差が見られなかった理由として、パートナー・家族の立ち合い禁止といった新型コロナウイルスの影響による出産の環境変化に加え、経産婦については第一子、第二子などの子育ての負担(外出できないなど)が、妊産婦全体に精神的な負担を強いたと考えられる。
・今回の調査では地域ごとの差異が確認されなかった理由として、衣食住の中で新様式が提案される中、感染拡大防止に対する個人の価値観や危機意識にばらつきが生じたと思われる。

■TOPIC2:妊婦・産婦が経験していること/感染への不安

<全体サマリー>
・今回の調査では、コロナ禍において、家計の収入減少、こどもを公共施設(移動のための電車移動なども含む)などへ連れていくことに対する批判(または批判されているように感じる他者の振る舞い)を経験しているかを聞いたところ、約38%が収入の減少を、約21%が批判されていたと感じる経験をしていた。
・コロナに罹患する恐怖について、以前も今も特に感じていない、以前は感じていたが今は感じていない、以前は感じていなかったが今は感じている、常に感じている、の四択で尋ねたところ、それぞれについて、7.3%、16.5%、5.8%、70.5%となり、常に感じている人が大半を占めていた。

(松島・堀口 2020(未発表))

<地域ごとの傾向>
・家計の収入の減少を経験している人の割合は、東京・神奈川・千葉・埼玉(36.1%)、大阪・京都・兵庫(38.6%)、愛知・福岡(44.0%)、北海道(32.6%)、その他の地域(37.9%)となった。

(カラダノートの考察)
・家計の収入減少と子どもを公共施設などへ連れていくことに対する批判を経験している人の割合の地域傾向については、緊急事態宣言の期間や感染者数との関連は見られなかった。
・約4人に1人が子どもを公共施設などへ連れて行きにくいと感じている結果に対し、先述のTOPIC1考察同様、経産婦の子育て負担の要因の一つに他者からの批判(または批判されているように感じる経験)などがあった可能性がある。

■TOPIC3:抑うつ状態の認識と対処

<全体サマリー>
・今回の調査では、自分自身が抑うつ状態にあるかどうか、そして、抑うつ状態にあると感じられるとき、どのような行動をするかを尋ねた。EPDSでは抑うつ傾向を把握しているため、カットオフ値以上の人が必ずしも抑うつ状態にあるわけではない点に注意が必要ではあるもののEPDSのカットオフ値以上であった人の中で自分自身が抑うつ状態にあると感じている人は約3分の1であった。

・抑うつ状態にあると感じられるとき、どのような行動をするかについて、現在抑うつ状態にあると感じている人には現在の状況を、現在抑うつ状態にない人についてはそのような状態になった時に取ると予想される行動を尋ねた(複数回答)ところ、身近な人への相談が最も多く、夫、家族、友人に相談するのいずれかまたは全てを予想される行動と考えている人は約81%であった。

・公的な外部サポートについては、子育て支援施設で相談(市町村提供)、子育て支援オンライン/電話相談(市町村提供)、医療機関受診 、医療機関オンライン診療受診のいずれかまたは全てを選択した人は約25%おり、そのうち90%以上は、身近な人へも相談すると回答している。

・「SNS上でつぶやく」や「子育て関連Webサイト等で相談(民間提供)」といったオンライン上の媒体を利用すると回答した人(いずれかまたは両方)は約18%であった。なお、このうちの約56%は身近な人にも相談、31%は、身近な人および公的機関にも相談、約3%は公的機関にも相談すると回答しており、オンラインの媒体以外にもなんらかの行動をとると考えている。

・身近な人、公的機関、(公的ではない)オンラインの媒体のいずれも利用しないと考えている人は約5%であった。これらの5%の多くは、気分転換をする、1人になる、睡眠をとる、など全く何もしないということではなく、「相談」という手段を取らない可能性が回答者の自由記述等から推察された。

(松島・堀口 2020(未発表))

<地域ごとの傾向>
・抑うつ状態の認識と対処について、いずれも地域差は確認されなかった。

(カラダノートの考察)
・自分自身が抑うつ状態にあると認識していたのが約3分の1だった理由として、新型コロナウイルスの影響で家族以外の人と話す機会が減少し、孤立しやすい状態から気が付きにくい環境にあるからかもしれない。

■調査概要
調査内容:新型コロナウイルス禍における心身の健康の変化
調査期間:カラダノート、ベビーカレンダー(2020年10月8 日〜10月12日)
調査対象:カラダノート(ママびよりメルマガ登録者)、ベビーカレンダー(べビーカレンダー運営サービスのメルマガ登録者)
回答人数:3861名(2社合計)
調査方法:インターネット調査

今後、引き続き定点調査をしていく予定です。
なお、前回の調査結果については、以下の論文にて発表をしております。調査へのご協力ありがとうございました。今後これらの論文をもとに政策提言を行っていく予定です。論文の本文を参照されたい方は筑波大学人文社会系松島みどり准教授までご連絡ください。

Matsushima, M., & Horiguchi, H. (2020). The COVID-19 pandemic and mental well-being of pregnant women in Japan: Need for Economic and Social Policy interventions. Disaster Medicine and Public Health Preparedness, 1-11.

<参照>
Tokumitsu, K., Sugawara, N., Maruo, K., Suzuki, T., Shimoda, K., & Yasui-Furukori, N. (2020). Prevalence of perinatal depression among Japanese women: a meta-analysis. Annals of General Psychiatry, 19(1), 1-18.

【本件の問い合わせ】
株式会社カラダノート 広報担当
pr@karadanote.jp